7.法務

1 知的財産権

(1) 知的財産権

知的財産は、知的財産基本法の第2条に、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動によりうみだされるもの(発見または解明がされた自然の法則または減少であって、産業上の利用可能性があるものを含む)、商標、ほかの事業活動に有効な技術上または営業上の情報を言う」と定義されています。
知的財産権は、同法第2条の2に 特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令より定められた権利または法律上補語される利益にかかる権利を言う」と定義されています。

パリ条約

パリ条約は、1883年にパリで成立した工業所有権にかんする条約です。パリ条約では次の3大原則を定めています。
・内国民優遇の原則
・優先権制度
・各国工業所有権(特許及び商標保護)独立の原則

ベルヌ条約

ベルヌ条約は、1886年にスイスのベルヌで締結された著作権の保護に関する条約です。著作権の成立には、特別な表示や登録を必要としない無方式主義と、コピーライトなどの表示を必要とする。方式主義があります。ベルヌ条約では、著作権は無方式主義、著作権の保護期間は50年間とされています。

(2) 著作権法

著作権法は、知的創造物についての権利 の1つである著作権を保護する法律です。

著作物

・プログラムは、プログラムの著作物として著作権法で保護されます。ただし、プログラムを作成するための言語、規約、解法は保護の対象外です。
・プログラムの設計書やマニュアルは、プログラムとは別の独立した著作物として保護されます。
・データベースのうち、その情報の選択または体系的な構成によって創作性があるものは、著作物として保護されます。

著作者

・著作者は、著作者人格権と著作権を享有します。
・法人などの業務に従事する者が、職務上作成する著作物 の著作権は特別な取り決めがない限りその法人等に属します。
・派遣社員が作成したプログラムの著作権は、派遣先にあります。
・請負契約を締結した業務によって開発されたプログラムの著作権は、特別な取り決めがない限り受託側に属します。

著作者人格権

・著作者人格権は著作者の人格的権利を保護します。著作者人格権は次の3つです。

第18条 公表権 未公表の著作物を公表する権利
第19条 指名表示権 著作物に著作者名の表示の有無を決定する権利
第20条 同一性保護権 著作物の内容などの意に反する変更を受けない権利

著作者人格権は、著作者に専属し譲渡することができません。契約による譲渡という形式をとっても契約は無効です。

著作権に含まれる権利の種類

・著作者は、著作物を複製する権利、美術の著作物の現作品を展示する権利などを専有します。

複製

・著作者以外のものによる複製は、例外的な場合を除き、著作者gの権利を侵害します。
・ソフトウェアの所有者がエラー修正のため、またはバックアップのために行うソフトウェアのコピーは認められます。
・ソフトウェアのリースを受けているものは、複製する権利を持ちません。

保護期間

・著作権が発生してから著作権が消滅するまでの期間を保護期間といいます。
・著作権は、著作物の創作のときに発生し、著作者の死後70年を経過するまで存続します。著作権者が団体であるときには、その著作物の公表後、70年存続します。
・映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後70年

権利の行使

・共同著作物の著作者人格権は、著作者全員の合意がなければ行使できません。

罰則

・著作権侵害に対しては、最大で10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。

(3) 特許法、実用新案法、意匠法、商標法

知的財産権のうち、特許庁が所管する特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つを産業財産権と呼びます。産業財産権は、特許庁に出願し、審査のあと、登録されることによって、一定期間、独占的に使用できるようになります。 特許権
発明を保護する。保護期間20年

実用新案権
物品の形状、構造または組み合わせにかかわる考案を保護する。考案とは自然法則を利用した技術的思想の創作。保護期間10年。

意匠権
意匠を保護する。意匠とは、物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合であって、資格を通じて美観を起こさせるもの。いわゆるデザイン。保護期間20年。

商標権
商標を保護します。商標とは、文字、図形、記号、もしくは立体的計上もしくはこれらの結合、またはこれらと色彩との結合 をいいます。いわゆるブランドです。保護期間10年。

(4) 不正競争防止法

不正競争防止法は、産業財産権の保護を目的として昭和9年に制定されました。平成5年にはソフトウェアやサービスに対応した技術上、経営上のノウハウの重要性が高まったことを踏まえて、営業秘密(トレードシークレット)を保護するための法律として全面的な改正が行なわれました。また、平成21年には、営業秘密侵害罪の目的要件の変更、営業秘密の領得自体への刑事罰の導入 などの処罰対象範囲の拡大が行われ、平成27年の改正では、営業秘密の保護強化が図られています。

営業秘密

営業秘密は、次の3つの条件を満たす必要がある。
・秘密管理性:秘密として管理されていること。
・有用性:事業活動に有用な技術上、営業上の情報であること。
・非公知性:公然と知られていないこと。

不正競争

・搾取、詐欺、脅迫など不正の手段によって取得したものを使用、または、開示する
・不正取得行為の介在を知りながら取得したものを使用、または開示する
・保有者から示された場合に、不正の利益を得る目的でその営業秘密を利用、または開示する。

2 セキュリティ関連法規

(1)サイバーセキュリティ基本法

インターネットに代表されるネットワーク環境の充実、情報通信技術の進歩に伴って世界規模でサイバーセキュリティに対する脅威が深刻化しています。サイバーセキュリティ基本法は、情報の自由な流通を確保しつつ、サイバーセキュリティに関する施策について、基本理念を定め、国や地方公共団体の責務などを明らかにし、サイバーセキュリティに関する施策の基本となる事項を規定しています。

(2)不正アクセス禁止法

ネットワークを利用してアクセス権限のないコンピューターに不正にアクセスすることを禁じる法律です。

・他人の識別符号を入力してアクセスすること
・コンピューターに対して特殊な情報または指令を入力してアクセスする
など

・不正アクセスを助長する行為も禁じられている。
 不正アクセス行為をしてはならない、他人のIDやパスワードを教えてはならない。

(3)刑法

・刑法では、情報システムに関連した条項が次のように規定さえています。
・電磁的記録とは、電子的方式など人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録で、電子けいさんきによる情報処理につかわれるものをいう。
・人の事務処理を誤らせる目的でその事務処理の用に供する権利、義務または事実証明に関する言辞的記録を不正に作る。

(4)個人情報保護法

個人情報、保護の対象となる情報は、一定規模以上の体系的に整理された個人情報です。
個人情報:生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別することができるもの。

個人情報取扱事業者

個人情報保護法には、個人情報取扱事業者の義務として、利用目的の特定、適切な取得、データ内容の正確性の保護、、安全管理措置、第三者提供の制限などが規定されています。個人情報取扱事業者は、本人からの要求に応じて当該本人の個人情報の開示、定性、利用停止をしなければならない。
ただし、マスコミが報道・著述の目的で個人情報を利用する場合、大学などが学術研究の目的で使用する場合、宗教団体が活動の目的で利用する場合、政治団体が政治活動の目的で使用する場合は、この義務の適用を受けない。

(5)ガイドライン・企画

個人情報の保護に関するガイドライン
各民間事業を所管する各省庁において個人情報の保護に関するガイドラインが策定されています。
厚生労働省、金融庁、総務省、経済産業省 

JIS Q 15001(個人情報保護マネジメントシステム)は個人情報を事業の用に供している、あらゆる種類、規模の事業者に適用できる個人情報保護マネジメントシステムに関する要求事項を規定しています。
プライバシーマーク制度は、個人情報保護の体制を整備してJIS Q 15001の要求事項を満たしていると認められる事業者に対して、一般財団法人 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)がプライバシーマークの使用を認可する制度です。

3 労働関連・取引関連法規

(1)労働者派遣法

・システムの開発や運用などで要員の派遣を受ける場合、労働者派遣法契約の下に、他人(派遣先)のために労働させることです。労働者と派遣もとの間には雇用関係が、派遣先と労働者との間には指揮命令関係が存在します。
・2重派遣(派遣先が、派遣労働者を別の企業などにさらに派遣すること)は禁止されています。

派遣契約
派遣先事業主と派遣元事業主との間で締結する労働者派遣契約には、次のような事項を定めます。
・業務内容
・就業場所
・直接指揮命令に関するものに関する事項
・派遣期間
・就業の開始時刻と終了時刻、休憩時間


派遣元の責任
・派遣先に対する通知事項
・派遣元責任者の専任

派遣先の責任
・派遣労働者からの苦情を受けた時の派遣元事業主への通知
・派遣先責任者の専任

(2)下請法

下請法は、下請け取引の公正化・下請事業者の利益保護のために定められた法律です。正式名称は 下請け代金支払遅延防止法 です。親事業者には、書面による発注、給付の受領後60日以内の下請代金支払い、支払遅延に対する遅延利息の支払いが義務付けられています。
・親事業者に課せられる禁止事項
 注文した物品等の受領拒否
 支払い期日までの下請代金未払
 下請け代金の減額
 受領品の返品
 著しく低い下請代金による契約
 親事業者が指定するもの・役務などの強制購入・利用
 有償支給した原材料などの対価について、当該原材料等を用いた給付に対する下請代金の支払い期日以前の支払い要求
 一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形の交付
 下請け事業者から金銭、役務の提供の共用
 費用を負担しない注文内容の変更、または受領後のやり直し強要

(3)民法

ソフトウェアの開発を外部に委託する場合に関連する法規として民法に請負手と委任の規定があります

◆請負
当事者の一方が仕事を完成することを約束し、相手方が仕事の結果に対して報酬を支払うこと

◆委任(準委任)
委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方にいに西、相手方がそれを承諾することで効力を生じます。
ソフトウェア開発など、法律行為以外の委託を準委任といい、委任の規定を準用します。
◆契約形態における相違点

・請負
仕事の完成責任: あり
契約者間の指揮命令関係: なし
作業場所: 受託側が調達
瑕疵担保責任: あり(通常1年)

・委任
仕事の完成責任: 通常なし
契約者間の指揮命令関係: なし
作業場所: 受託側が調達
瑕疵担保責任: 原則なし

・派遣
仕事の完成責任: なし
契約者間の指揮命令関係: 派遣先が派遣労働者へ指揮命令
作業場所: 派遣先が指定
瑕疵担保責任: なし

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です