5.ビジネスインダストリ

1 ビジネスシステム、エンジニアリングシステム

各種ビジネス分野に用いられる代表的な情報システムの特徴、生産に関する要素技術などを解説します。

3PL

3PL(third party logistics)は、企業の物流に関連する業務の一式を請け負うアウトソーシングサービスです。3PLでは、調達に関連する物流、製造に関連する物流等も含め、委託元企業の物流の全体最適化を実現します。また、物流に関連する情報システムも提供します。3PLを提供する企業にとっては、自社の持つリソースを有効に活用することによって、少ない投資で3PLを実現できます。

CDN

CDN(Contents Delivery Network)は、ストリーミングメディアやソフトウェアのアップデートファイル等のコンテンツを、多数の宛先に効率よく配信する為の、ネットワークで接続された複数のサーバー環境です。CDNを構成するサーバーは、オリジナルのコンテンツを格納しているオリジンサーバーと、配信先に近いネットワークに位置するエッジサーバーから構成されます。利用者がコンテンツにアクセスする場合は、利用者に最も近いエッジサーバに接続します。オリジンサーバへ直接接続と比較すると、エッジサーバーを利用する事によって、高速なダウンロードが実現できます。また、トラフィックの集中を避けたり、可用性の向上が図れたりするというメリットもあります。

EDINET(Electronic Disclosure for Investors’s NETwork)

EDINETは、金融商品取引法に基づいて有価証券報告書などの書類を電子的に開示する時に使用されるシステムの名称です。EDINETによって、企業から開示された書類をWeb上で閲覧できます。2007年4月1日以降は、提出する書類をすべて電子データとすることが義務付けられ、2008年4月1日以降に開始する事業年度にかかる提出書類について財務所要部分をXBRL化して提出する事が義務付けられました。

スマートグリッド

スマートグリッドはITを活用することによってリアルタイムにエネルギー需要を把握し、効率よく電力を供給する仕組みです。従来の電力メーカーでは電力の積算消費量はわかりmさうが、家庭、オフィス、工場などが消費している電力をリアルタイムに把握することはできません。スマートグリッドでは、従来の電力メーター音代わりに、スマートメーターと呼ばれる機器を利用します。スマートメーターは、消費している電力の情報などを、ネットワークを経由して電力会社にリアルタイムに転送します。電力会社は、詳細は電力使用量を把握する事によって精度の高い電力需要の予測をすることが可能になり、きめ細かく発電量を調整できるようになります。

デジタルディバイド

デジタルディバイトはパソコンやインターネットなどの情報通信技術(IT)を使いこなせる人と使いこなせない人との間に生じる格差のことで、情報格差と呼ばれる場合もあります。次のような項目の差によってデジタルディバイドが生じると考えられています。
・コンピューターの購入費用
・継続てきに投資できる通信料金
・使いこなすためのスキル
・インターネット接続などの通信環境
国家間の地域の間にも、デジタルディバイドが生じる場合があります。

VICS

VICS(Vehicle Information and Communication System : 道路交通情報通信システム)は、一般財団法人道路交通情報通信システムセンターが収集した道路交通情報を加工・編集し、通信システムを経由してカーナビゲーションシステムなどの車載装置に送り、道路交通情報を表示させるシステムです。VICSによって提供される情報には、渋滞情報 所要時間 速度規制 工事情報 駐車場の位置 などがあります。

ファブレス

ファブレス(Fabless)は、外部の企業に生産を100%委託しているメーカーです。自社では生産設備をもたないため、製品の設計、マーケティング、販売などに経営資源を集中することができます。生産設備には相応の投資が必要となる為、ファブレスであれば小規模なメーカーであっても市場のニーズに合った製品をタイム理に提供できるようになります。

ファウンドリ

ファウンドリ(Foundry)は、他社からの委託による生産を専門に手掛けるメーカーです。ファウンドリは、多くの企業の製品をまとめる事によって低コストで生産する事ができます。ファウンドリの製造技術は高いため、大手企業であってもファウンドリを活用する場合があります。

2 e-ビジネス 民生機器 産業機器

(1) EC

EC(Electronic Commerce 電子商取引)は、ネットワークを活用し、電子的に決済などを行う取引形態です。電子商取引の起源は、EDIなどによって特定の企業間の定型的な取引を電子化したところにあります。現在ではインターネットの普及によって企業間だけではなく一般消費者を対象とした電子商取引が幅広く行われています。取引を行う両者の立場によって次のような電子商取引の形態が考えられます。 B to B(business to business)
企業と企業を結んだ調達や受発注などの取引形態です。

B TO C (Business to Customer)
企業と顧客を結んだ受発注を行う取引形態です。Webサイトを利用したオンラインショッピングなどが代表例です。

C TO C(Customer to Customer)
WEBサイト上で行われるネットオークションのように、顧客と顧客を直接結び付ける取引形態です。

G TO B(Goverment to business)
官公庁がインターネットなどを経由して電子調達を行ったり電子入札を行ったりする取引形態です。

エスクローサービス

エスクローサービス(Escrow Service)とは、物品などの売買に際し、売買の当事者以外の第3しゃが決済を仲介して、取引の安全性を保証する仲介サービスです。インターネットオークションなどでは、面識のない当事者同士が取引します。出品者と落札者との間で、安全に代金に支払いや商品の受け渡しをするために、エスクローサービスが利用されます。
エスクローサービスを提供している事業者は、落札者から代金を一時的にあずかり、入金を確認した時点で出品者に商品の発送を依頼します。落札者が発送された商品を受け取ったことを確認した時点で出品者に代金を支払います。エスクローサービスによって、代金を受け取って商品を発送しないといった詐欺行為や、商品を送ったのに代金が入金されないといった詐欺被害者を防ぐ事ができます。

ロングテール

インターネットを利用した商品の販売においては、物理的な店舗スペースが不要となる為、膨大な種類の商品を低コストで扱うことができます。人気商品を大量に販売しなくても、年間に数個しか売れないような商品も含め多品種の商品を少量ずつ販売する事によって、大きな売り上げや利益を得る事ができます。縦軸に販売数量、横軸に商品を販売数量の多い順に並べたグラフを描くと、販売数量の少ない商品を示す部分が右方向へ長く伸びる曲線が描かれます。その様子が長い尻尾に見えるところからロングテールと呼ばれています。

インターネット広告

インターネット広告はWEBサイトやメールを使用して企業が製品やサービスを宣伝する事です。インターネット広告には、
1 利用者の年齢・性別などの属性、嗜好などによって、広告の対象を細かく分ける事ができる。
2 利用者の広告への対応によって、広告をインタラクティブに変化させることができる。
という特徴があります。インターネット広告には、表示方式、配信方式、課金方式、などによって分類できます。代表的なインターネット広告を次に示します。

■表示方式


・バナー広告
 Webページ内に広告枠を設け、広告画像を掲載する。
・テキスト広告
 メール等で配信されるテキストで構成される広告。
・タイアップ広告
 メディアによく掲載される記事形式の広告。
■配信方式
・検索連動型広告(リスティング広告)
利用者の検索行為に連動して検索結果の広告枠に表示される広告です。
・コンテンツ連動型広告
利用者が閲覧するホームページの内容や利用者の関心に合わせて配信される広告
■課金方式
・インプレッション保証型広告
掲載が始まってから、所定の回数配信されるまで掲載を続ける広告です。
・期間保証型広告
指定された期間だけ掲載を保証する広告
・結果報酬型広告
広告主の商品やサービスを利用者が購入した段階で課金される広告
インターネット広告の掲載には一般に費用が伴いますので、広告の効果を測定し、費用対効果を確認する必要があります。広告の効果を測定する指標には次のようなものがあります。

広告の効果を測定する指標

インプレッション数
インプレッション単価
クリック率
コンバージョン率
顧客獲得単価
広告費用対単価

フリーミアム

フリーミアムとは、基本的な機能を無償で提供し、追加の機能 特典 情報などを有償で提供する事によって利益を獲得するビジネスモデルです。Webサービスに関する事業をマネタイズする場合に、多くの企業がフリーミアムを採用しています。フリーミアムには次のような特徴があります。

メリット
・基本的な機能を無償で提供し幅広く利用者に認知されること。口コミのよって利用者が一層拡大する事などが期待できます。
・利用者は 無償で製品を体感できます。

デメリット
・ビジネスを黒字化するまでに時間を要します。
・有償部分の範囲を決定するなどの運用面での厳しさがあります。

(2) EDI

EDI(Electronic Data Interchange)は、注文書や請求書などを電子化して複数の企業間でのリアルタイムな取引を行う仕組みです。取引にかかわる一連の文書が電子化される為、文書作成などのコストの削減が期待できます。
EDIでは、異なる組織間の取引に関する情報を、標準化された規約(プロトコルやデータ形式)に基づいて、電子的に交換します。
EDIは次に示す4つのレベルの規約から構成されています。

EDIの規約

レベル4 取引基本規約 EDIによる取引の法的な有効性確立のための取り決めです。
レベル3 業務運用規約 業務やシステムの運用に関する取り決めです。
レベル2 情報表現規約 取引情報を相互のコンピュータで扱う取り決めです。
レベル1 伝送回線や伝送手順などに関する取り決めです。

レベル2の情報表現規約としてANSI X.12、EDIFACT、CII標準など複数の規格が定められています。国連の欧州経済委員会によって開発された規格であるEDIFACTは、ISO9735としてISOに採択されています。

XBRL

XBRL eXtensible business Reporting Language は企業の財務諸表などを記述・交友するために開発された言語です。金融業 監査法人などが構成する業界団体のxbrl international がxmlをもとにして仕様を決めています。財務情報の標準データ形式としてxbrlを使用すれば関係者間での財務・会計情報の交換が容易になります。金融商品取引法において、貸借対照表・損益計算書・株式資本等変動計算書・キャッシュフロー計算書はXBRL形式による提出が義務付けられています。

ebXML

electronic business XML は企業間の電子商取引に関して規定される世界的な技術標準です。XMLをビジネスに活用する事によってインターネット上で提供される多様なWebサービスを共通のインターフェースで利用できるようになります。ebXMLえはWEBサービスを利用するために必要となるメッセージのよびだし順序、取引情報を交換するためのフォーマット、通信プロトコルなどをリポジトリーに登録します。WEBサービスの利用者はリポジトリから必要な情報をダウンロードする事によって、さまざまなWEBサービスが利用できます。

(3) 民生機器

民生機器の具体例を解説します。

センサネットワーク

複数のノード(無線端末)が協調して、交通、エネルギー、農業などの分野において 環境や物理的状況を観測できる無線ネットワークです。ノードはセンシング機能のほか、中継機能やルーティング機能を持っていて、あるノードに障害が発生しても中継する経路を再設定する事が出来ます。

EMS

EMS Energy management system エネルギー管理システム は 情報技術を用いて 家庭 ビル 工場などエネルギーの使用状況を管理して最適化するシステムのことです。EMSでは 電力使用量の可視化、節電を目的とした機器制御、太陽光発電機の様な再生可能エネルギーの制御などが可能になります。EMSは管理対象によって次のように分類されます。

HEMS Home Energy Management System 一般住宅
BEMS Building Energy Management System ビル
FEMS Factory Energy Management System 工場内
CEMS Community Energy Management System 地域全体

(4) 産業機器

産業機器に関連する技術を解説します。

ティアダウン

ティアダウン(Teardown)は 競合する製品を入手して部品単位にまで分解し、部品単位で分析する活動です。自社製品コストを見直したり、品質向上を図ったりする事を目的にしています。製品を部品単位にまで詳細化するため、例えば、部品単位の削減コストを積み上げる事によって、全体でどの程度のコスト削減が可能になるかを知る事も可能になります。ティアダウンでは使用されている部品、製品の構造、設計の考え方などを明確にし、自社製品と詳細にかつ多面的に比較しながら分析しますので、自社の技術力向上にも大きく寄与出来ます。白物家電、自動車、AV機器など、多くの製品に対してティアダウンが行われています。他社製品の優れている点を発見できれば、自社が取り組むべき課題も明確になります。

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